萩沖~長州(54)



車をバックさせて菊が浜海水浴場の無料駐車場に止めようとすると、後ろに見える営業中の旗の奥にシュロの木が見えた。
萩城はこのすぐ西側にあるから、萩の城下町もシュロの木が私の散歩を案内してくれるのだろうか。
砂浜は白く美しい。
浜から沖を眺めるとたくさんの島々が浮いて見える。
もう30年も前のことだが、今は牛で有名になっている見島(みしま)に一泊旅行したことがある。
社員旅行だった。
今と違って、昔は企業の従業員同士は仲間であり、親睦を大事にしていた。
成果主義などとドライな思考など持ち出さなかった。
劣っている社員は何とかして、役割を見出してあげ、生きていくすべを企業内で授けてくれていた。
仕事が優秀だからといって2倍も3倍も給与を上げるという馬鹿なこともなかった。
比較的皆で幸福を味わおうという集団意識が強かったように思う。
今は個々人独立の戦いという雰囲気で、仲間を思いやるゆとりもない。
わが身のことで精一杯な社会になってしまった。
その見島で民宿に泊まり風呂上りに2階の部屋から中庭を見下ろして夕涼みしていた。
すると、中庭はずれにある風呂場から若い女性が出てきて、上半身裸のまま中庭の飛び石の上を歩きながら民宿の中へと入っていくのが見えた。
自然に見えた光景だったが私は驚いた。
その、民宿の若奥さんだったからだ。
大きな乳房を隠そうともせずに、湯上りの風に吹かれながらおおらかに歩いて庭を横切る姿に、ミロのビーナスのような美しさを感じた。
それは彼女たちの日常であり、隠すという週間さえまだなかったのだろう。
ゴーギャンがタヒチ島を訪ねて、そこに天国を見たという気持ちがわからないでもない。
おそらく30年も経った今では見島でそういう景色は残っていないだろう。
古き良き時代とは、そういうことも含まれる。
ここから約40km沖合いにあるはずだ。
いくつか見える島の中の一つが見島かも知れない。
2011-01-15 15:10
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0